今回ご紹介する「The Changeover」はNZを代表する作家Margaret Mahyの作品。Mahyは絵本や子供向けの作品、それにヤングアダルト小説を書いています。国際的にも認められていて、イギリスの児童文学賞であるカーネギー賞を二度、アメリカのフェニックス賞を3度受賞しました。
また、児童文学への永続的な寄与に対して与えられる国際アンデルセン賞の作家賞が2006年に贈られています。この国際アンデルセン賞は小さなノーベル賞とも呼ばれ、「人魚姫」や「みにくいアヒルの子」で知られている作家アンデルセンにちなんで賞の名前がつけられている賞です。「魔女の宅急便」の作者、角野栄子さんも2014年に受賞していますね。
作者2度目のカーネギー賞受賞作となるこの作品、日本語訳は『めざめれば魔女』というタイトルで岩波少年文庫から出ています。岩波少年文庫は今年で創刊70年となりますが、『めざめれば魔女』は「テーマ別おすすめ」の中の「あんな家族、こんな家族」のジャンルで選ばれています。
舞台はニュージーランドの地方都市ですが、主人公の少女Lauraは、呪いのようなものをかけられ重態になった幼い弟を救うために、魔女に助けを求める…と書くとファンタジーのように思えますが、どちらかというとLauraの成長物語になっています。
「超自然的なスリラー小説とティーンエージャーのラブストーリーの、境目のない融合」というイギリスのガーディアン紙の書評がありましたが、14歳の少女の成長を、ファンタジーを通じてリアルに描く、といった感じではないしょうか。実際、読んでみると、年上の男子生徒に対する心のゆらぎや、自分と幼い弟をシングルマザーとして育ててくれている母親に新しい恋人ができたことを素直に受け止められない気持ち、それに自分たちのもとを去った父親に新しく子供が生まれることをどう受け入れるのかなど、14歳の少女の内面を主に描いているように感じました。
正直ファンタジー要素は入れなくてもいいのでは、と読んでいる途中までは思ったのですが、魔女や呪いのようなものを使う不気味な悪役を入れることでLauraの不安と焦りがよりじわじわと感じられます。またタイトルどおりLauraがchangeover(変身)していく場面は、ファンタジーであるからこそこれだけ想像力を刺激するシーンが描けるのだな、と思いました。子供から大人に変わっていく不安定な時期、そんな時期を乗り越えていく様子をリアルな手法とはまた別の手法で印象的に描いているのではないでしょうか。
↑この表紙を見るとおどろおどろしくて、本当に児童文学賞をもらったのかな、大人向けなのかなと思ってしまいましたが、読んでみるとそんなことはなかったです。ニュージーランドを代表する作家によるこの作品、ご興味を持たれたらぜひ読んでみてください。
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