ウクライナがずっと大変な状況になっていますね。早く平和になってほしいと日々願っています。
今回ご紹介する本はヨーロッパが戦火にまみれた第二次世界大戦の、ポーランドと思われる土地が舞台の“The Boy in the Striped Pajamas“です。
この本は子供がYear9のとき、日本でいうと中学1年から2年の年齢のときに学校の国語の授業で使われていたので読んでみたことがあるのですが、主人公が9歳の男の子で、自分も子供を持つ親としてずっとはらはらしながら、最後は胸が苦しくなりながらも読み終えました。
9歳の男の子Brunoは、父親の仕事のためベルリンから突然見知らぬ土地へ引っ越します。大都会ベルリンと違い、新しい家の周りには他の家は見当たりません。そしてBrunoの部屋の窓からは、数十メートル向こうに長く続くワイヤーフェンスが見えます。自分たちの家よりも高いそのフェンスは上が有刺鉄線になっていました。花の咲いている自分の家の庭とは違い、フェンスの向こう側には緑が一切なく、小屋と四角い建物が並んでいます。フェンスのほうには絶対に行ってはいけないと親から言われていたのですが、遊び相手もいなくて退屈していたBrunoは、探検をしようとフェンスのそばまで行ってみます。そこで縦縞のパジャマを着た少年Shmuelと出会い、二人は友達になります。ですが、最後は悲劇的な別れを迎えるのです。
Brunoがフェンスを見つけるのはOut-Withという土地で、ユダヤ人の強制収容所があること、またその発音から、アウシュビッツ(Auschwitz)強制収容所がモデルだろうと読者に思わせます。またFury(怒り)という、ヒトラーを思わせる人物が出てきますが、ヒトラーの肩書であったFührer(総統)に似た単語を使っています。
(ちなみにドイツ語訳ではAus-Wisch、Furorと、やはり似たような言葉を使っているようです)
作者はアイルランドの作家John Boyne。2006年に出版されたのち世界中で約700万部以上が売られました。2008年には映画化もされています。イギリスではホロコーストについて教えるために歴史や国語の授業で使われているそうです。
ナチスやホロコーストという、この作品の時代背景を知っている読者には、Brunoの無邪気さに胸が苦しくなってくるのではないでしょうか。特に物語の最後の方で、この作品のタイトルであるThe Boy in the Striped Pyjamasが誰のことなのかがわかるようになっていて、自分も子供を持つ親として最後は読み進めるのが辛くなりました。
また、この作品はフィクションであって史実ではないのに、書かれていることが本当のことだと思いこむ読者、特に子供が多いという批判や、読者はホロコーストの被害者であるユダヤ人ではなく加害者側の家族にシンパシーを感じるようになる、といった意見もこの作品については見られました。
ですが、9歳の男の子の目を通して家族やその他の登場人物一人ひとりの性格や関係性が浮き彫りになっており、また平易な表現でこの時代の悲劇性を描いていて、深く考えさせる作品になっていると思います。
この作品は9歳のブルーノの視点から書かれているため、使われている英語も難しくありません。読みやすくリライトされた版もあります。これはペンギンリーダースのレベル4で、だいたい英検2級から準一級レベル。
80ページと比較的短いので、ページが多い洋書はちょっと、という方も挑戦してみてはいかがでしょうか。
『縞模様のパジャマの少年』というタイトルで日本語訳も出ています。映画はAmazonプライム・ビデオでも見られます。
この作品は13歳以上の読者が対象となっていて、日本語訳も中学生向けとなっていますので、それぐらいの歳のお子さんをお持ちの方は親子で読んで感想を話し合ってはいかがでしょうか。
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