ニュージーランドで英語教育 ほうかごブログ

ロアルド・ダールで「国語」の授業

「ねえねえ、これ読んでみて」
と学校から帰ってきた娘がしきりに勧めてきました。ちょっと今忙しいから後でね、と断ると、「じゃあ読んでいくから聞いていてね。短いから」と朗読し始めました。
う~ん、いま取りかかっている作業を終わらせたかったのにな、と思いつつ聞いていると、どうやら若いビジネスマンが出張の途中、ある町で宿を探している様子。最初は普通の話のようでしたがだんだん不気味な感じになっていき、思わず途中から聞き入ってしまいました。
「何これ? なんか怖いだけど」と聞いてみると、我が意を得たりという感じで
「そうでしょ。しかも難しい単語は全然使っていなくて、怖い感じを直接描写する部分もないのに、読んでいるとじわじわと不気味な感じが伝わってくるでしょ」
と娘。この短編、ロアルド・ダールの「The Landlady」という作品で、学校のEnglishの授業、日本でいうと「国語」にあたる授業で読んだとのこと。
ロアルド・ダールは「チョコレート工場の秘密」「Matilda」など子供向けの作家のイメージが強かったのですが、大人向けの短編も書いていたんですね。

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娘はYear9で、日本でいうと中学校の2~3年生にあたります。授業では、先生が朗読したあと、内容についてまずクラスで意見を言い合ったそうです。
「この作品が好きだと思う人は?」と聞いた後、どこがいいと思うのかと先生が重ねて聞くと、「ミステリアスなところ」と多くの生徒が答えたとのこと。先生は「どういう部分がミステリアス?」と問いかけ、本文中の具体的な描写をクラスでピックアップしていきました。
この作品はタイトルどおり重要な登場人物が宿屋の女性主人なのですが、クラスではその女性がどういう人物を考えていきました。「どういう髪型?」「きれい好き?」「みんなからどう見られている?」など先生がいくつか例となる質問をし、それはどの部分に書かれているの?」と具体的な根拠を聞かれます。そうやって少しクラスで練習した後、生徒が各自、その人物についてさらにノートに書き出していきました。
授業では「The Landlady」と併せて同じくロアルド・ダールの「Lamb to the Slaughter」という短編も読みました。この作品もやや不気味な雰囲気の内容で、メインとなる登場人物が女性なのですが、その女性についても上記と同じ作業をします。特に二人の女性を比較する必要はなかったのですが、生徒によっては比較して書いたようです。
ニュージーランドの授業は、先生が生徒を正解に導くというよりは、生徒が考え先生はそのサポートをする、という傾向があります。実際、小学校でも「私の役割は教えることではありません。生徒が考えるのを助けることです」という先生がいました。そのため、このEnglishの授業でも登場人物の分析は、答え合わせというものがなく、生徒が書いたものに先生がコメントを加える、という流れでした。
また生徒が考えるのを促すためでしょうか、生徒はわからないことがあったら自分から質問しなければなりません。上記の課題をやっているときも、先生が回ってきてときどき、「大丈夫?」と聞くことはありますが、基本的には生徒各自が自分で進め、疑問点があれば手を挙げて聞く、という感じだったそうです。

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書き出す作業はノートに手書きにしたり、PCで打ち込んだりと生徒が自由にしていいのですが、最終的にはデジタルノートアプリOneNoteで先生と共有します。うちの娘はノートに書いていたので写真を撮ってOneNoteに上げていました。娘の通っている学校ではOneNoteに課題がアップロードされ、生徒がやったものもそこでシェアされるので、自分の子供が何をやっているのか子供に見せてもらわなくてもオンラインで確認することができるのが親としてはありがたいです。

Englishの授業はほぼ毎日あるのですが、2作品を先生が読み、クラス全体でブレストしてから各自登場人物の分析に取り組む、というので一週間を使ったとのこと。さらには、「The Secret」というタイトルで短編小説を書く、ということもしたそうです。上記2作品では女性登場人物が罪を犯しています。「The Landlady」ではそれがはっきりとは書かれておらず、一方「Lamb to the Slaughter」では自分の犯罪を隠しています。この創作課題でも、何か悪いことをした人を登場させ、悪事をどうやって隠しているのかを書かないといけません。また、その悪事はその人物と読者しか知らず他の登場人物はわかっていないのか、それともその人物しか知らなくて読者にもわからないのか、どちらかの設定という条件もつけられました。また書くにあたっての注意点として、ストレートな描写を避け、例えば悲しみを表現したかったらShe was sad.と書くのではなく、涙がこぼれた、など表現するよう先生が言われたそうです。
この授業で使ったロアルド・ダールの両作品は「Tales of the Unexpected」という短編集に収録されていますが、各作品のKindle版も出ています。
「The Landlady」
「Lamb to the Slaughter」

また日本語訳は、「The Landlady」は「キス・キス」という短編集の中で「女主人」というタイトルで、「The Lamb to the Slaughter」は短編集「あなたに似た人Ⅰ」の中で「おとなしい凶器」で収録されていますので、ご興味のある方は読んでみてください。

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Posted on: October 16th, 2020 by Yuko Okumura コメントはありません

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